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岡枝慎二氏のこと

サイドビジネスで、特に高校生に大学受験の英語指導をしています。
サイドビジネスといっても1時間のレッスンに対し4時間くらいを準備にかけるので、時給に換算すると恐ろしく低いです。
利益を重要視したらとてもやってられません。
でも反面、とてもやりがいを感じています。
私が今までに得てきた知識を若い人がどんどん吸収してほしい、そして役立ててほしい、そんな気持ちです。
そんな気持ちになるのも、岡枝慎二氏との接触が大きく影響しています。

20代の後半、ある財団法人の英語教育機関に勤務していました。
会場を提供している関係で、英検の2次の面接時はサポートのために出勤しました。
入社したての私は2級の担当でした。
1級の面接官は、在京の著名な日・米の英語学者、書店の学習書コーナーに行けばその著書が目につく方ばかりでした。
そして私が担当している2級の面接官には、高校の先生とか若い大学助教授が多かった。
そして、その中に岡枝慎二氏がいました。
この7か国語をあやつる著名な映画翻訳家がなぜ2級を担当しているのか、私には解せませんでした。
英検も何やってるんだろう、なぜ1級の面接官を依頼しないのだろう、と思っていました。
しかし、職場の先輩から聞いた話では、岡枝氏はあえて2級を志願されているとのことでした。

ある時、とても緊張した高校生の男子が受験に来ていました。
顔は真っ赤で、手に汗をかくのか、しきりにズボンで手をごしごしとぬぐっていました。
その高校生は岡枝氏が担当でした。
そして、その高校生が入室する時、私はたまたまチラっと目撃してしまったのです。
岡枝氏の、なんとも例えようのない優しそうな笑顔を。

英検2級は高校生から大学生になりたての受験生が多い。
かたや1級は成人以上が主です。
あくまで私の推測ですが、岡枝氏はこれから英語を学んでいく若い人たちに会いたかったのではないか。
エールを送りたかったのではないか、と思います。

そんな岡枝氏も鬼籍に入って10年以上が過ぎました。
当時、英検のたびに岡枝氏の著書を鞄に忍ばせていた私。
機会があれば、サインをもらおうと思っていましたが、ついに果たせませんでした。
英検の時は字幕翻訳家ではなく2級面接官の岡枝慎二としていらっしゃってる、そんな岡枝氏に字幕翻訳に関する著書のサインを求めるのは失礼じゃないのか、そんな自問自答の結果でした。
その本は、今も私の書架で安らかに眠っています。
岡枝慎二氏のこと_e0138549_16094198.jpg










by nobikunJ | 2015-12-13 16:09 | | Comments(8)
Commented by inumochi at 2015-12-14 09:50
良いお話ですね。
いまもなお、外国語を話すときは、額に汗かくし、言葉が出ない分、身振り手振りが外国人より大きくなってしまう私は、その男の子の気持ちがよくわかります。緊張しまくりだったその男の子、先生の笑顔に気づく余裕があったかな(笑)。本当に、語学がお好きな先生だったのですね。
私も、高校時代、受験のための外国語の個人教授についていました。おばちゃん先生だったのですが、受験のためのテクニックを教えるというより、ご自身が語学が好きで、いくつになっても知識欲のある方で、多感な年ごろの私たちはとても影響を受けました。そのせいか、先生の卒業生の中には、多方面で活躍している人が多いです(私は落ちこぼれですが、それでも一応語学関係の仕事を続けていられるのは、先生のおかげです)。
のび君パパの生徒さんたちも、きっとパパさんの熱意を感じて、羽ばたいてくれますね。これから10年後、20年後が楽しみな立派なお仕事です。
Commented by nobikunJ at 2015-12-15 17:55
☆inumochiさん
温かなコメントありがとうございます。
数年前に教え子たちが推薦で国立大学に受かり、今度4年生になります。先日久しぶりに遊びに来てくれたのですが、教師になるつもりとのことで目が輝いていました。若いって本当にいいな~と思います。
もう、英語指導は半分ボランティアと化していて、毎日、毎日受験英語とにらめっこ、気がつけば1か月ほとんど休みがないこともざらですが、楽しんでやっています(本を読む時間がなかなかとれないのが難点ですが)。
inumochiさんの恩師の方にはとうてい並ぶことはできませんが、私も英語を教えるだけでなくその背景にあるもの、例えばキリスト教の歴史とか、時事問題のポイントなどに関しても説明するようにしています。それがわかれば、もっともっと英語に興味をもってくれると思うからです。あと、できるだけ自分に興味のある分野の英語を読むよう指導してます。なにせ、自分が英語を勉強し始めたきっかけは、Jazzの輸入レコードのジャケットの裏面に書かれている解説が読みたかったから、ですから。
自分で言うのもなんですが、私の場合、聴く、読む、書くは自信があるのですが、「話す」は苦手です。生来が内気な人間だからでしょうか(あまり信じてもらえませんが 笑)。
一人でも若い子たちの夢がかなうよう、がんばるつもりです。
Commented by suezielily at 2015-12-16 15:34
>英検の時は字幕翻訳家ではなく2級面接官の岡枝慎二としていらっしゃってる、そんな岡枝氏に字幕翻訳に関する著書のサインを求めるのは失礼じゃないのか、

賢明なご判断だったかと。

>キリスト教の歴史とか、時事問題のポイントなどに関しても

山下智宏主演のドラマで、英語講師の女性にホレる僧侶という設定でしたが、彼が英語相当に巧くて、クリスマスの歴史について説明していて講師役のさとみちゃんよりも巧くて。ちなみにライバル役の俳優さん(役名が三嶋。嶋、ね)と速水もこみち も巧いでした。
深夜番組で山ピーが英語を話すバラエティがあったので巧いことは知っていたのですが。
Commented by marucox0326 at 2015-12-18 19:17
こんばんわ。

英検かぁ・・・今は高校で準2級くらいは必修にしていたり、
大学入試に必要だからと受験される学生さんが多いようですが、
40数年前は英文科の学生だった友人でも受験すらしていない
人もいました。私自身は高一の時、3級を全員受験させられました
けど、英語の出来る人でも2次面接で落ちたりして
それだけ受験英語一色の、実用的ではない英語教育だった
気がします。

背景にあるものと関連付けて教えるって大切ですよね。
興味のあることに関係していたり、知らない世界を一緒に教わる
と進んで覚えられるし、忘れません。
それは歴史でも数学でも同じで、アプローチの仕方次第で
苦手科目も面白く思える第一歩だと思います。
私も中三の時の数学の先生がそうでした。
超苦手科目だったのに、飛躍的に成績があがったことがありました。
その後、みごとに墜落しましたが^^;

人にものを教えるって尊いことですが
責任も伴い、ご苦労が多いことかと思います。
でもやりがいを感じてらっしゃるご様子でなによりです。

Commented by nobikunJ at 2015-12-20 09:27
☆suezielilyさん
ご賛同いただけて幸いです。私人と公人の立場みたいなものですかね(ちょっと違うかな・・・)。
山下智宏って、あまり明るくないのですが、ジャニーズですよね。人気のある人が英語を巧く操ると、若い人たちには刺激になっていいかもしれませんね。
数年前に同時通訳者と食事する機会があって、その際に興味深い話を聞いたのですが、アメリカ人がその歌を聴くと発音の巧さに驚く歌手がいて、それはなんと鈴木雅之(シャネルズ、のちのラッツ&スターのボーカル)だそうです。彼は特に発音の正式なトレーニングを受けたわけではないと思いますので、子供の頃から聴いていたR&Bが先生だったのだろうな、と。良い話だと思いました。
Commented by nobikunJ at 2015-12-20 09:44
☆marucox0326さん
私、英検に関してはあまり肯定的ではなく、否定的な意味で日本の英語教育の典型みたいにとらえていましたが、子供たち、特に中学生に英語を教えるようになってちょっと考えが変わりました。その内容の是非はともかく、彼ら、彼女たちにとって英検への挑戦って、一つのマイルストーンなんですよね。何年生の何月までに3級に合格できるようにがんばる、そう決心して努力する姿は愛おしささえ感じます。そういう挑戦に英語の学習が使われているって、それはそれでいいなあ、と。
日本語でもそうですが、やはり興味のない分野の文章は読んでいても頭に入ってこないですよね。ところが、Jazzに関する英文だったら、すこしくらい難しくても辞書をひきひき懸命に意味を追う、そんな坊主頭の中学生が私でした(笑)。教育機関に勤めている頃、新聞配達をしながらボクサーを目指す、ハングリーを絵に描いたような男子が入学してきました。英語を勉強する理由を尋ねたところ、「クリンチした時に、相手が浴びせてくる英語の罵倒を理解したいから」でした。素晴らしい理由だと感動したことを覚えています。
英語指導、大変ですが(昨日も一日仕事でした)、不思議と苦にはならないです。こういうのを天職っていうのかな。これに専念できれば良いのですが・・・。
Commented by stefanlily at 2015-12-21 17:32
>アメリカ人がその歌を聴くと発音の巧さに驚く歌手がいて、それはなんと鈴木雅之

江利チエミさんとフランキー堺さんが上手いなあ、と思いました。ネイティブから聞いてどうかは??
Commented by nobikunJ at 2015-12-21 19:17
☆stefanlilyさん
フランキー堺は大ファンでしたが、英語の歌は聴いたことがあいませんでした。もともとはドラマーですよね。伴淳と共演した喜劇駅前シリーズは大好きで、喜劇駅前旅館だったけな、フランキーが納豆を食べるシーンがあって、納豆の糸をこうお箸でくるくるする様に大笑いした記憶があります。懐かしいです。


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